音楽:ヴィヴァルディ 『四季』より「冬」 第3楽章
Antonio Vivaldi, The Four Seasons, RV.269. "Winter", 3rd Mvt.

絵画:ジョヴァンニ・セガンティーニ 「淫蕩の罪」
Giovanni Segantini, The Punishment of Luxury, 1891.

Stéphane LAMBIEL
2005-2006 Long Program



 ヴィヴァルディの『四季』は、2006年、トリノ・オリンピックの銀メダリスト、世界選手権金メダリスト、ステファン・ランビエール選手のフリーの曲でした。
 黒髪に太い眉、男らしい顔立ちで、落ち着いて見えますが、まだ20歳。素顔はとても真面目な、好青年です。

 トリノ・オリンピック、世界選手権のどちらも、大事な試合の前に膝の故障で、練習にドクター・ストップがかけられ、数日練習できなかったりと、出場さえも危ぶまれました。
 トリノ・オリンピックでは明らかに調子が悪く、SPではトリプル・アクセルを失敗、フリーでも転倒がありましたが、4-3-2の3連続ジャンプを決め、みごとに優勝しました。
 スイスの小さな村で生まれ育ったランビエール。村の人々はみな親戚のようで、彼の試合のたびに、応援に来ているそうです。
 表彰式でランビエールは感極まり、涙を流しました。

 世界選手権の方は、こちらも出場が危ぶまれるほど膝が悪化していたにも関わらず、不安要素は微塵も見られない演技で、予選では2位以下を大きく離して1位通過し、SPではやや調子を落としたものの、予選の貯金もあったこともあり1位のまま、フリーでは4回転を2回決め、みごとに優勝しました。
 若い選手ながら、たった2年で貫禄さえも見えました。

 けれど、彼が頭角を現したのは、わずかその1年前の2005年世界選手権でした。
 優勝候補だったエフゲニー・プルシェンコがSPで怪我のため棄権、他の実力派選手たちが我こそはと優勝を競いながら失敗し、誰も予想もしなかった、このランビエール選手が初優勝を飾りました。
 彼は2002年のソルトレイク・オリンピックに出ていたものの、この時15位。
 2005年の世界選手権優勝まで、それまでのGPシリーズ、ヨーロッパ選手権で、一度も表彰台に登ったことはありませんでした。
 彼の演技で素晴らしいのは四回転と高速スピン、特にスピンはどうやったらこんなに軽く速く回れるのか、驚きと感動でいっぱいになります。


 ランビエール選手のFSの曲、ヴィヴァルディの『四季』は、各季節が三楽章形式になっています。ランビエールのFSは以下のように構成されています。



 2005-2006年シーズンは、イタリアで開催のオリンピックをふまえてか、プッチーニやヴェルディなど、イタリアの作曲家の曲を使う選手が多くいますが、ヴィヴァルディもヴェネチア生まれのイタリアの作曲家です。

 またこのページに飾っている絵画は、ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858-1899)の「淫蕩の罪」です。セガンティーニはイタリア人ですが、スイス・アルプスに魅せられ、数多くの作品を残しています。
 私の好みで、真面目な好青年のランビエール君のページに、「淫蕩の罪」と「よこしまな母たち」など飾ってしまいました…。