絵画:グスタフ・クリムト 「ピアノを弾くシューベルト」 1899年
Gustav Klimt, Schubert am Klavier (Schubert at the Piano), 1899.

MIDI:フランツ・シューベルト 「菩提樹」
Franz Schubert, Der Lindenbaum, D.911, Op.89


 クリムトが描いた、幻想的で美しい絵画「ピアノを弾くシューベルト」(1899年)は、第二次世界大戦末期1945年に焼失し、永遠に見ることができない作品です。
 第2次世界大戦中、美術館や個人が所有していた「ピアノを弾くシューベルト」を含むクリムトの3枚の絵はナチスに没収され、インメンドルフ城に疎開していましたが、1945年、親衛隊が撤退する際、城に放火し、他の絵画共々焼失してしまったのです。幸いカラー写真が残され、その美しさを偲ぶことができますが、当時の写真技術から、本来の色彩がどうであったのか、永遠に分からなくなりました。

 作曲家のフランツ・シューベルト(1797-1828)は、グスタフ・クリムト(1862-1918)が生まれる三十数年前に亡くなっています。2人は会うことはありませんでしたが、この絵が製作されたのは、ちょうどシューベルト生誕100年の頃、古き良きウィーンでは愛する「歌曲の王」の生誕が盛大に祝われていたのでしょうか。