音楽:『ライムライト』より 「テリーのテーマ」
Terry's Theme (Limelight)

絵画:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック  「楽屋の踊り子」
Henri de Toulouse-Lautrec, Danseuse dans sa loge.

Elena Berezhnaya & Anton Sikharulidze
2000-2001 Long Program


 ロシアのペア、エレナ・ベレズナヤ&アントン・シハルリドゼは、1998年の長野オリンピックで銀メダル、2002年のソルトレイク・オリンピックでは金メダルを獲得しています。
 女性のエレナが、こぼれおちそうな大きな目の、小柄で可憐な方で、人形か妖精のように見え、大好きでした。
 彼女は以前は別のパートナーと組んでいましたが、練習中に、彼女の頭にエッジがあたってしまい、大怪我をおい、一時は言語障害にもなってしまいました。
 そして2年後、新たにアントンと組み、みごとに復活し、二つのオリンピックでのメダリストとなったのです。

 この2人の代表作というべきプログラムが、2000-2001シーズンのフリー、映画『ライムライト』のテーマを中心とした「チャップリン」でした。

 チャールズ(チャーリー)・チャップリン(Charles "Charlie" Chaplin, 1889-1977)は、映画史上に輝く、偉大なコメディアンであり、監督です。
 ハリウッド黎明期の無声(サイレント)映画から、50年代のハリウッドの黄金時代まで、活躍し続けました。その作品のほとんどが自作自演、音楽まで手がけました。
 貧しい人々に目を向けた彼の喜劇は、笑いと涙、皮肉と哀愁が盛り込まれ、名作を次々と打ち出しました。

 エレナ&アントンのフリー「チャップリン」は、『ライムライト』(Limelight, 1952)のテーマを中心とした、チャップリン映画の音楽を使用し、名作『街の灯』(City Lights, 1931)を、氷上で演じました。



Limelight (1952)


 『街の灯』(1931)は、サイレント映画の名作です。
 チャップリン演じる放浪紳士が盲目の花売娘に恋をします。そして、彼女の花を買ってあげ、目の手術をさせるため、必死で働くようになります。
 一方、目の見えない少女の方の方もまた、自分に親切してくれる相手が、お金持ちの紳士だと、夢を見ます。

 エレナ&アントンの「チャップリン」は、コミカルなダンスを交えつつ、はっとするくらい美しいプログラムでした。アントンがチャップリンの特徴をよくとらえていて、時に転びそうな演技をしたり、エレナが可愛らしく泣くマイムをしたり、ストーリー性があって、見ていて、とても楽しい作品でした。

 けれど、この代表作というべきプログラムで、世界選手権では1位を取ることができなかったのは、とても残念でした。
 そして、この時に優勝したサレー&ペルティエとの争いは、翌年のソルトレイク・オリンピックまで、続くことになります。




City Lights (1931)


 二人はソルトレイク・オリンピックで引退してしまいますが、エキシビションで、やはりチャップリンの名作『キッド』(The Kid, 1921)を演じています。
 映画に出てくる少年の扮装をしたエレナが可愛らしく、特に大げさな演技をしているわけではないのに、本当に幼い少年に見えて、アントンを慕っている姿、またアントンの少年をかわいがっている姿が優しくて、暖かくて、こちらも素晴らしい作品に仕上がっていました。
 この作品も、音楽に『ライムライト』を使用していました。



The Kid (1921)