音楽:ロッシーニ 歌劇『ウィリアム・テル』 序曲
Gioacchino Rossini, Overture from "Guillaume Tell (William Tell)".


絵画:Sir Henry Raeburn, Boy And Rabbit, 1814.



Evgeni Plushenko
1996-1997 Long Program



 天才少年であった、エフゲニー・プルシェンコは、1997年、14歳で世界ジュニア・チャンピオンとなりました。
 その1996-1997年シーズンにフリー・スケーティングで使用したのが、このロッシーニの『ウィリアム・テル』序曲でした。
 96年、グランプリ・シリーズ・ロシア大会の映像を見ましたが、まだ本当に痛々しいくらい華奢で、やせっぽちな少年でした。ジャンプは高く正確で、でも、ダンスは一生懸命やってはいるのだけれど、まだぎこちなさがありました。でもその一生懸命さが、とてもかわいくて、愛おしかったです。
 地元ロシアということもあり、この天才少年は、とても人気で、会場の拍手がなりやみませんdした。点数は旧採点6.0が満点で、5.2〜5.5でした。初のシニアの大会で、素晴らしい成績だったと思います。
 そして翌シーズン、初出場の1998年世界選手権で、みごとジェーニャ(エフゲニーの愛称)は、銅メダルを獲得しました。


 ジェーニャが使用した『ウィリアム・テル』は、スイスの伝説の英雄ウィリアム・テル(ドイツ語ではヴィルヘルム・テル)を主人公にした、ロッシーニの歌劇です。
 14世紀初頭、オーストリア(神聖ローマ帝国)に支配されていたスイス。テルの住むウーリにも、オーストリア人のゲスレル(ゲスラー)という冷酷非道な代官が、いばりちらしていました。
 町の中央広場にはゲスレルの帽子が飾られ、その前を通る者は、帽子にお辞儀をしなければなりませんでした。
 ところが、弓の名手として評判の高かったウィリアム・テルだけは、その帽子に頭を下げませんでした。
 テルは逮捕され、ゲスレルの前に引き出されます。そして、ゲスレルは、テルが弓の名手だと聞くと、テルの息子ジェミーの頭にリンゴを乗せ、これを射てみよと難題を与えました。みごとに射ることができれば、彼を自由の身にするというのです。
 父を信じきったジェミーの頭上のリンゴを、テルはみごとに射抜きました。けれど、テルが二本目の矢を隠し持っていることが、見とがめられ、テルはもし自分が射損じたら、これでゲスレルを射るつもりだったと言い放ちました。
 ゲスレルは怒り、またもテルは逮捕されました。けれど、テルの勇気に感動した人々が、今度は立ち上がります。そして、それはスイス中に広がり、ついには開放されるのでした。