音楽:ロッシーニ  歌劇『セビリアの理髪師』より 「私は町の何でも屋」
Gioacchino Rossini, Figaro's Cavatina (Il barbiere di Siviglia).

絵画:Rosalba Carriera, Portrait of a boy of the Leblond family, 1740.

NOBUNARI ODA
2005-06 Short Program


 2005-2006年シーズンは、ジュニアからシニアに移った織田信成選手の、大きな飛躍となったシーズンでした。

  かの戦国武将、織田信長の17代目の末裔ということでも有名ですが、近寄りがたさは微塵もなく、愛嬌のある親しみやすい魅力を持っています。
 グランプリ・シリーズではカナダ大会3位、NHK杯1位、GPファイナルでは4位となりました。
 NHK杯で初優勝を飾った時の号泣は、ご本人はきっとしつこく追及されたくないだろうなと思いつつ、とても可愛らしくて、こちらも少しもらい泣きしてしまいました。

 トリノ・オリンピックに出場する1枠を高橋大輔選手と最後まで競り合いましたが、全日本選手権で、惜しくも2位となり、オリンピックには行けませんでした。
 この全日本選手権ですが、実は織田選手は最初1位という判定が出て、表彰式まで行われたのです。kれどその1時間後、採点ミスがあったと分かり、高橋選手が逆転で優勝し、織田選手は2位となり、やり直しの表彰式が行われました。
 「納得している部分は1割。9割は悲しい」という言葉が胸に刺さりました。決して選手のせいではなく、後味が悪くなってしまったのは、とても残念でした。

 けれど、気持ちの切り替えは早く、四大陸選手権で優勝。
 そして、オリンピックで優勝したプルシェンコ選手を抜かした、オリンピック上位陣が全員参加した世界選手権では大活躍をし、日本が女子選手だけでなく、男子も素晴らしいということを世界にアピールしました。

 世界選手権、上位の選手は、ステファン・ランビエール、ブライアン・ジュベール、ジェフリー・バトル、エマニュエル・サンデュー、ジョニー・ウィアー、エヴァン・ライサチェックと、稀に見る美形揃い。その中で、日本人としても小さな織田君は浮いているのですが、その存在感は決して負けていませんでした。
 予選B組を1位通過、SP2位、最終的には4位という素晴らしい成績でした。

 決して美形ではなく、どちらかといえばファニー・フェイス、けれどそれを生かした演技が、とても魅力的です。SPの頭を抱えたり、口を大きく開ける演技は、カナダの会場でも笑いが起こり、高く綺麗な3回転ジャンプを次々と決めていって、見ていて、とても気持ちよかったです。
 正直に言えば、世界選手権は、予選もSPも、ここまで上位に来ると思わず、殿(織田選手)にどう頭を下げていいか分かりません。2010年のバンクーバー・オリンピックを目指す織田君の将来がとても楽しみです。

 織田君の楽しい「セビリアの理髪師」のSPを見ていると、シェイクスピアの喜劇「夏の夜の夢」の悪戯な妖精パックを思い出します。


アーサー・ラッカム画 『夏の夜の夢』より パック
Arthur Rackham, Puck (Midsummer Night's Dream)