音楽:サン=サーンス 「序奏とロンド・カプリチオーソ」
Camille Saint-Saëns, Introduction et Rondo Capriccioso Op.28.

絵画:エドワード・バーン=ジョーンズ 「天地創造の日々:第1日」(部分)
Edward Burne-Jones, The Days of Creation:The First Day (detail). 1870-6.

JOHNNY WEIR
2004-05 Short Program



「あの美しさはもったいなくて手も触れられぬ、
立派過ぎてこの世のものとも思えぬ!
まるで烏(からす)の群れの真ん中におりた純白な鳩だ」


 シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の中の、ロミオがジュリエットを初めて見た時のセリフです。
 2004年のNHK杯の男子シングル、ショートプログラム。私にとって、そんな純白の鳩を見た思いでした。

 今年もエフゲニー・プルシェンコは来ないんだと、彼の天才的演技の大ファンなので、その不在に少し物足りなく思いながらテレビを見ていたら、颯爽とした男子の選手の中に浮き上がるように、赤の衣装の華奢な姿。
 「女の子?」と思うような繊細で綺麗な顔立ち、長めのカールした髪。
 もちろんそれは少年で、どんな演技をするのだろうと身を乗り出してテレビを見ました。
 それは儚く軽く舞うようで、少年のようであり少女のようであり、なんて綺麗なんだろうと、ただただうっとりと見つめていました。
 しかも美しい上に、ジャンプもスピンも次々と決め、堂々の1位。

 そのショート・プログラムで使われていた音楽が、フランスの作曲家サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」でした。
 こういった綺麗な少年には、中性的で響きのいい名前が似合います(妄想)。
 セシルやフランシス、天使の名前も似合いそう。たとえばラファエル。

 まさか…いかにもアメリカンな、“ジョニー”だなんて。

「名前に何があるというのでしょう?
わたくしたちがバラと呼んでいる花の名前を変えたところで、
花の香りに変わりはないはずなのに…」


 ロミオに出会った時のジュリエットのセリフです。
 リンクに咲いた薔薇、ジョニー・ウィアー君♪♪
 涙は白い薔薇、微笑みはピンクの薔薇、そして勝利の瞬間、赤い薔薇が咲き誇る。
 一度でも多く、一瞬でも長く、その美しい演技を観ることができますように。
 時が止まって、その美しさが永遠であればいいのに。



バーン=ジョーンズ 「ガラハッド卿」
Edward Burne-Jones. Sir Galahad. 1858.