音楽:ビゼー 歌劇『カルメン』より 「闘牛士の歌」
Georges Bizet, Air de Toreador (Carmen).

絵画:ルイ・イカール 「セヴィーリャ」
Louis Icart, Seville, 1928.

 2005年、日本のフィギュアスケート、というよりもスポーツ全体の中で、もっとも沸かせたのは、15歳の浅田真央ちゃんではなかったでしょうか。
 初めてのシニアの大会、グランプリ・シリーズ中国大会で3位、フランス大会で優勝、そしてグランプリ・ファイナルでは、イリーナ・スルツカヤを抑えての優勝は、本当に素晴らしかったです。
 その真央ちゃんのショート・プログラムがこの『カルメン』でした。お姉さんの舞さんから貰ったというオレンジの衣装は真央ちゃんが着ると、とても可愛らしくて、いい意味で赤い金魚を思い出しました。今のままでも可愛らしいけれど、またいつか年を重ね、更に表現力を身につけた真央ちゃんを、フリーで観てみたいです。

 『カルメン』は、カタリーナ・ビットや村主章枝さん、長野五輪アイスダンス銀メダル、ロシアのアンジェリカ・クリロワ&オレグ・オフシアンニコフ組、そしてこの2005〜2006年では、アイスダンス、ロシアののタチアナ・ナフカ&ロマン・コストマロフ組が、この『カルメン』をフリーで使っています。

 そしてもう1人、男子・シングルのエフゲニー・プルシェンコも、ソルトレイク五輪でこの『カルメン』をフリーで使いました。グランプリ・ファイナルの後、急遽変更したプログラムで、最大のライバルであったアレクセイ・ヤグディンへの対策でした。けれど体調もよくなかったこともあり、まさかの2位という結果に終わりました。
 プルシェンコのファンなのに、この『カルメン』をずっと忘れていました。それは優勝を信じていたソルトレイクは思い出すとつらいので、1回しか見ていないせいですが、久しぶりに見返すと、彼らしく、激しいながら柔らかく綺麗でした。でも最高に似合うだろうこの『カルメン』が彼の代表作にならなかったのは、とても残念でした。
 もう『カルメン』はやらないだろうと思いつつ要望…。
 『カルメン』で思い出すのが、バレエで、ローラン・プティがマニュエル・ルグリに振付けた「カルメン−ソロ版」。ホセ、カルメン、エスカミーリョの3人を1人で踊りましたが、情熱的なホセはもちろん、扇を持って足を180度まで高くあげる艶麗なカルメン、プレイボーイな闘牛士エスカミーリョのコミカルな動きまで、同じ衣装のまま演じわけ、本当に素晴らしかったです。
 あくまでも個人的にですが、激しさと両性具有な柔らかさを併せ持つプルシェンコに、そんな一人三役の氷上版「カルメン−ソロ版」を演じてほしいのです。