音楽:『ゴッドファーザー』より 「ゴッドファーザー・ワルツ」
The Godfather Waltz


絵画:トーマス・ロレンス 「コリオレイナスに扮するジョン・フィリップ・ケンブル」
Thomas Lawrence, John philip Kemble as Coriolanus, 1798.


Philippe Candeloro
1993-1994 Long program



Love Them From The Godfather
(『ゴッド・ファーザー』より 「愛のテーマ」)


 1994年リレハンメル・オリンピック、1998年長野オリンピックの、2つのオリンピックの銅メダリスト、フランスのフィリップ・キャンデローロ(キャンデロロ)。
 美形で、愛嬌たっぷり。サービス満点の、素晴らしいエンターテイナー、そして人を引き付けてやまない演技をする選手でした。

 リレハンメル・オリンピックでキャンデローロのフリー『ゴッド・ファーザー』を観た時、オールブラックの衣装に、クールな整った顔立ち、長めの髪をオールバックにして、細身で、手足や指が長く、おまけに憧れのフランス人!なんてミステリアスで綺麗な人だろうと、ときめきました。
 演技の方も、イメージのまま、クール・ビューティ。モダン・バレエ的なしなやかな演技、細やかな動き。それでいて力強い。最後の最後で、2度目のトリプル・アクセルを失敗したのが、悔やまれましたが、銅メダルとなりました。





 そして楽しみにしていたエキシビション。
 それは、私の中の、クール・ビューティな彼のイメージを、180度変えてしまいました。

 彼のエキシビションは、『ロッキー』。
 シルベスター・スタローン主演のボクシング映画の名作ですが、彼の出番になっても、リンクに姿はなし。そして会場に『ロッキー』が流れ出すと、なんと客席の方から登場。

 衣装は、なんとアメリカ国旗(フランス人なのに…)。
 客席の女の子にキスするし…(おいおい…)
 バック・フリップ(いわゆるバク宙)するし…(お〜!)
 脱ぐし……(滝汗)

 とにかく最高におもしろいスケーターで、イメージは変わったものの、すっかりファンになりました。
 そう思った日本女性は私だけでなく、オリンピックから1ヶ月後に、日本で開催された世界選手権で、彼はすっかり人気者。彼の演技後には、リンクが埋まるほどの花束が投げ込まれ、彼も驚きつつ、大喜び。フリー演技中に、客席に手を振るなどのパフォーマンスをしました。そして、この大会で、自己最高の銀メダルを獲得しました。

 この後、毎年のようにキャンデローロは、NHK杯に出場。日本で彼が演技した後には、いつもリンクに花の山ができたのは、もう伝説でしょう。
 後で知りましたが、彼はイタリア系だそうです(やっぱり!(笑))

 彼の『ゴッドファーザー』への愛とこだわりは強く、1993-94、1994-95シーズンはSPもフリーも『ゴッドファーザー』。
 93-94、94-95のSPは、故郷からから出てきた?若き日のゴッド・ファーザー。93-94のフリーは、オリンピックでも見せてくれた、黒衣装のゴッド・ファーザー。1994-95シーズンのフリーは、老いたゴッドファーザーという設定で、三部構成の「ゴッドファーザー」でした。


 そしてリレハンメルから4年後、の長野オリンピック。
 キャンデローロは、フランスの冒険歴史小説『三銃士』を題材にした「ダルタニヤン」で、みごと2度目の銅メダルを獲得しました。
 この時のフェンシングのマイムをしながらの、ストレートライン・ステップの見せ方は、本当にみごとでした。



ルイ・イカール 「ダルタニアン」
Louis Icart, D'Artagnan, 1931.